2006年本試験問題 : 社会保険に関する一般常識
問5 次の文中の【 】の部分を選択肢の中の適当な語句で埋め、完全な文章とせよ。
戦後の混乱は社会保険制度にほとんど壊滅的打撃を与えた。昭和20年には、官業共済組合をふくめて、全国民の約3分の1が【 A 】に加入していたといわれ、【 B 】は全国で約1万組合、被保険者約4,100万人に達していたが、昭和22年6月にはわずかに40%ほどの組合が事業を継続しているにすぎない状態であった。【 C 】もまた財源確保のために【 D 】の改訂と料率引上げを繰り返さざるえなかったのである。 以下省略。
[社会保険に関する一般常識]Aについて
当初,試験会場で配布した速報では「9 医療保険」とお知らせしていましたが,その後,「全国民の約3分の1が【9医療保険】に加入していた」とするなら,Bの「【2国民健康保険】は全国で約1万組合,被保険者約4,100万人に達していたが」という記述と矛盾するため(昭和20年当時の全国民の数は7,200万人であったため,その3分の1は2,400万人となる),直接根拠となる文献が明らかになるまでの間は,「正答なし」として判断を保留することとしました。
しかし,このたび,有識者のご協力により,Aに係る文献が明らかとなりましたので,Aの正答を「9 医療保険」とした上でその根拠をお知らせいたします。あわせて,資料提供者の方に厚く御礼申し上げます。
- 昭和43年に刊行された「戦後の社会保障本論」(社会保障研究所編/至誠堂)に,次のような記述があることが判明しました。
「昭和20年10月,官業共済組合をふくめて,全国民の約3分の1が医療保険に加入していたといわれる。国民健康保険は全国で1万456組合,被保険者4,139万人と称されていたが,昭和22年6月にはわずかに40%ほどの組合が事業を継続しているにすぎない状態であった。」
出題者はこれを出典として出題した可能性が高いため,Aの正答を「9 医療保険」とするものです。
- なお,当該文献にはさらに「戦後における社会保障の展開」(大内兵衛編/至誠堂)という原典(昭和36年刊行)があり,それには次のように記載されています。
「終戦直後の昭和20年10月には,官業共済組合を含めて,全国民のほぼ3分の1が,なんらかの形で社会保険の保護をうけていた。しかしこれらの中には,国民健康保険のように,形の上では全国に10,456組合を擁し,これによる保護をうけるもの4,139万人と称せられたが,その実態はまことに貧弱きわまるものであった。」
このように,「医療保険に加入していた」と「なんらかの形で社会保険の保護をうけていた」とでは,文意が異なると思われ,(1)の文献から出題することは受験生に誤解を与えかねないものと考えます。
- すなわち,戦時体制のもとに行われた強制的な加入促進の結果である「全国で約1万組合,被保険者約4,100万人」という数字は,実態を伴わないものであり,実質上「社会保険の保護をうけていた」のは「全国民のほぼ3分の1」であったというのが原典の趣旨と考えられるからです。この点は原典において「4,139万人と『称せられた』」とあることから明らかです。問題文ではこの部分が「達していた」となっており,この点でも文意が十分に伝わらないと思います。
- 受験生の中には,いったんは,9を選択したものの「4,100万人×3倍=約1億2千万人」であることから,他の選択肢を選んでしまった方もいる可能性があります。根拠が明確である以上,9が正答である可能性が高いですが,わずか1頁の問題文の中で判断を求めるものである以上,前後の文脈に矛盾が生じないことが求められます。
本問題の空欄Aに関し,適切なものであったのかどうかについては,疑義が残るところです。 |